舞楽
取材を終え、渋谷の喧噪を抜けて一路、乃木神社へ。管絃祭と題された雅楽演奏会が開催されている。
実は毎年10月末に皇居にて行われる秋季雅楽演奏会に参加申し込みをしていたのだが、今年は「天皇陛下ご即位20年という慶事」にあたるため申込者多数であったようで、抽選に漏れてしまったため、詳しい方に他所でやっている演奏会について教えて頂いた末、辿り着いた。
国家神道の残り香に触れながら、雅楽の奉納演奏に聞き入っていると、平衡感覚というか、時空の認識力があやうくなってくる。笙による高周波の持続音、リズムがないのにシンクロする打点と演奏、舞い。神前に居るという微かな緊張感。大陸由来で日本の古典音楽だが、明らかに「此処」ではない何処かと繋がっている感。永遠に古びない音。
帰りに久々にタワー渋谷店へ行ったら、2007年にサラーム海上らと行ったシンガポールWOMAD(ピーター・ゲイブリエルが立ち上げたワールド・ミュージック・フェスティバル)最大の想い出、イラン南部のペルシャ湾岸都市に伝わる音楽を継承しているというEnsemble ShanbehzadehのスタジオREC盤が新譜として出ていた。(CDのアーティスト名はSaeid Shanbehzadeh)
アラビア海、インド洋を通じて昔から交易が盛んだったという経緯から、文化的にも人間的にも相当なミックス・ブラッドだということ。政治的な混乱や、軍事、宗教といった面からの緊迫感ばかりが伝わってくる同国の文化的パースペクティブのようなものが立ち上がってくる、シンプルだが奥深い、究極のエキゾティシズム。
ネイ・エ・アンバンというバグパイプみたいな楽器が奏でる彼岸感、この音はスゴい。そして最終的にトランスへ至るという舞楽…
Saeid Shanbehzadeh – Musiques Du Golfe Persique (BUDA/3017925)
というワケでやっと戻ってきました。乃木神社で「御神前につき撮影はご遠慮ください」と言われながらコソ撮りした雅楽道友会の写真(下)幽玄・夢幻ですね。