2009 disc heritage
2009年中、アンビエント・ミュージック1969-2009を読んでから、アンビエントとそこから派生するような音楽を中心に、時代に逆行するようにCDでずいぶんと購入して聴いていた。聴かないものをいろいろと処分して、どうしても聴いてみたいものを買い求めていると、当たり前のように音楽パッケージ・メディアの究極的な魅力、機能美を再発見する。ヴァイナル・フェティッシュに負けず劣らず、メディア・アートの豊潤な残滓とでも言うべき感触、絶妙のサイズ感に未だ心躍る。パッケージを手にして音楽を再生する、その1枚で区切られた時間は仕事をしていようと車を運転していようと、もちろんその音楽に対峙していても、相当に贅沢な時間だ。今後もMP3や音楽入りSDカードを積極的に買おうとは全く思えない。
ということで、ダンス・ミュージック以外の2009年俺ベストを。と考えたところ、2009年にリリースされたものはそんなに買っていないことが判明…とにかくこういうの、誰にも頼まれてないのに一度やってみたかった〜順不同5点。
Saeid Shanbehzadeh
“Musiques du Golfe Persique”
以前の記事でも取り上げた、イラン南部ペルシャ湾岸地域の伝承音楽。これは2007年のWOMADシンガポールにてライヴで観た衝撃が強かったので、偶然にCDリリースを発見した時はアガった。録音物も相当にトランシーで強力なので、このご時世に頑張って探してみてください。
James Blackshaw
“The Glass Bead Game”
12弦ギターを様々なチューニングで弾くアコギ技巧派。12弦ギターのみで荘厳なサウンド・スケープを展開していた以前の作品と比べ、ピアノ、ヴォイス、ストリングスなどを導入して極限まで美しいアンサンブルを。宗教芸術の耽美的な精度と響きを彷彿とさせる。シチュエーションによっては涙を誘うでしょう。
Mountains
“Choral”
スリル・ジョッキーからのデビュー盤である本作で初めて知ったNYCの2人組。アコギやドローン、フィールド録音使いなど、Aurora Acousticsの原初の発想と近いものを感じさせ、久々インスパイアされたが、我々は全然制作をしてないな。今年は私家版でもかまわないので作ろう。
White Rainbow
“New Clouds”
知らないアーティストだったがジャケに惹かれて購入、柔らかなサイケデリック音絵巻が凄くいい。上記MountainsとAnimal Collectiveの間に居る感じ。何故かミルトン・ナシメントを想わせるところもある。雲間をず〜っと漂ってていつの間にか波間になったり時々太陽や地上が見えてくるような感覚。
John Frusciante
“The Empyrean”
リリース時にけっこうな話題になっていた作品。何と言うかロックが普遍的に物語るもの、を現代において奇跡的に聴けたような気がした。リスナー・コンシャスに配慮されたミックス、マスタリングも素晴らしい。行き過ぎた量産、産業化の揺り戻しのような時代がこれから来るんだろう、とも認識させられる。
年が明けて実家に帰省したり初詣をしたり新年会をしたり、の合間に鳴っていたのはジャズ。正月にジャズ、は何故だか良く似合う気がする。Roland Kirk「Rip Rig and Panic」が改めて相当いい。ネナ・チェリーが居た同名のポスト・パンク・バンドのファンだったことからのプラシーボ効果かとも思ったが、そういうことでは明らかにない。「Now please don’t you cry…」との2in1のCDを持っているが、本人の演奏もさることながら、それぞれElvin Jones、Grady Tateという名ドラマーを擁し、ジャズでしか聴けないグルーヴを存分に放射していて最高。多分Roland Kirkの存在そのものが発火点となって特別なQuartetを形成してるのだろう。というわけでKirk絡みの音を新たに物色中。